代表取締役
店舗や工場、住宅を対象に、建築一式・リフォーム全般、空調設備・メンテナンス事業などを展開している。
音響熟成木材を利用した
健康に暮らせる家作り
創業当初は、エアコンの洗浄や外壁塗装、防水などを両輪として、近隣の方の困り事に対応する形で、自分が生まれ育った文化住宅の一室からスタートした。たとえばエアコンの洗浄を頼まれれば深夜に作業に行くといった具合で、夏場のエアコンの水漏れや、トイレの水詰まり、トイレの入れ替え工事など、さまざまなお困り事に対応して積み上げてきたものが、現在のこれだけの形になっている。昨年が20期で年商2億超に達した。
創業当初から現在まで、営業という意識はなく、一貫して紹介による顧客開拓を図ってきたので、大々的な広告活動はしていない。10年超のメンバーばかりだが、飛び込みによる新規開拓営業も一切行ったことがない。人とのつながりを大切にして、受注した案件によって実績を積み、信頼を得て業務拡大を図っていくのが本来のビジネスの理想。
建築業はいったん引き渡しをしたら、メンテナンスまでの期間が長いためにお客様との関係が途切れてしまいがちだ。しかし、そうならないよう誠実な営業スタイルを貫いてきた。大切にしているのは一期一会の出会い。エアコン洗浄など一つ一つの案件は似通ったものかもしれないが、だからといって惰性でこなすと、お客様にもそれが伝わってしまう。弊社に任せたら安心と思っていただけるように、一件一件を着実にこなしている。
同友会に入ったのは創業から5年目の2008年。
建設業は異業種からのスタートだったので、さまざまなことを経験しているうちに、経営者として何か真面目に勉強できる場があればと思っていた。
いざ入会してみると、皆さんが真剣に討論をしている姿を見て、こんなに会社や従業員のことを思っている社長さんたちがいることに衝撃を受けた。
入会してよかったと思う理由は、まず、いろいろな人と討論をしたり交流したりしていく中で、これまでの自分を振り返ることができたこと。
業者として信じてやってきたことは間違いではなかったと知ることができた。関西ブロック支部長交流会が神戸で開かれた時に、挨拶で「同友会とは経営者のテクニックを学ぶところではない、経営者の生き様を学ぶところです」と話された時は、自分の信念が確信に変わった瞬間でもあった。
同時に、時代が変化していく中で皆さんと一緒に歩んでいくと、自分の力の足りない点、衰えている点もどんどん発見できた。
例えば自分は高卒ということもあり、大卒の方に比べてボキャブラリーが少ない。真面目に事業に取り組んできている方ほど言葉巧みで、きちんと思いを表に出すこともできるが、自分はそこが苦手だった。指針セミナー(現、経営指針確立・実践セミナー)を受けて理念作りをした時に痛感したのだが、かつては、理念は頭の中にあるのだから、それを表に出せばいいと安易に考えていた。しかし、具体的な言葉として出てこないし、ましてや他者に伝えていくとなれば、どれだけ難しいのかを悟った。そういったことを知るのはいろいろな意味で衝撃であり、自分の足らないところを自覚するということでもあった。もし、頭の中に理念があればよいという考えで意固地になっていたら、今の成長には至っていないかもしれない。
経営面でプラスになっていることは、学びによって、数字よりも理念に向き合えるようになったこと。本当に「何一本で、きたのか?」と聞かれたら、理念一本で、きている。
理念を言語化することがなぜ大切なのかといえば、理念とは従業員たちの目印となり、考えさせるポイントになるからだ。あとは自分たちの行い一つ。社内でも話していることだが、思考と言葉と行動、この三つが一致しないと信用・信頼にはつながらない。
月一回の会議では必ず理念唱和や、行動指針を記載した弊社オリジナルカレンダーの内容と解説を繰り返し読んでいる。理念唱和、行動指針唱和によって大きな変化があったかどうかまではわからないが、そこを基準に物事の話ができるというのは大きい。弊社の理念には、事業内容の「建設を通じて」「空調を通じて」といった言葉は一切ない。あるのは人としてどうかというところでの表現である。
また、やるべき目標を掲げた時、ある程度理解できている人ならば、数字目標があればわかりやすいが、理解できていない人の場合は、何のためというところから入っていかなくてはわかりにくい。ある人物が若本と直接話した時は理解できるが、その人物を通して、さらに他の人に伝えることができるかというと、これが難しい。経営者は日常の業務の中で理念につながっていくことを拾い、繰り返し話していくことが大事なのだと考えている。
何のために仕事をしているのかというと、利潤追求のためではなく、いかに人としてどうだったのか、人格を高めていくためにやっている。偉人でもない我々庶民が唯一自分の生きてきた証を残せるとしたら、次の世代から次の世代へと伝わっていくようなことを考えながら実践していくことだと思う。そうしたことが理念として残っていく。
同友会入会にあたっては、何のために入会するのかという目的を持っているのと持っていないのとでは、その後の成長が大きく変わってくると思う。人との関わり、人との摩擦、そういったところが人を成長させる学びとなる。私が入会当初に衝撃を受けたように、自社の従業員と真面目に向き合っている経営者の方々の中にいると、磨かれるものがたくさんあるはず。
ゲストとしてお声掛けした方によくお伝えしているのは、営業を目的とするのではなく、学びの場として参加した方がよいということ。自分の行いを他の方々が見ているし、従業員から評価をもらえない部分についても他の経営者の方々が評価してくれるので、成長できる場として、ぜひとも入会をお勧めしたい。
ただ、謙虚な気持ちは大事だけれど、遠慮はしない方がよいこともお伝えしたい。例えば委員会に出席できないことがネックで委員長を躊躇している人。誰か他の人が出席できれば問題はないので安心していただきたい。自分の代わりに出席をお願いするのは押し付けではなく、その相手にチャンスを回してあげることなのだから。これは私自身が支部長を務めたからこそ言えることでもあり、その経験から多くを学ぶことができた。そこを遠慮してしまうと経営者失格だと思うし、そういう考え方も同友会で得たものの一つ。今の自分の高さから見えている景色よりも、さらに高いところから美しい景色を見られるようになること請け合いです。
同友会は、中小企業の経営を守り、共に団結していこうという趣旨から、1957年に東京で設立されました。その後、組織が全国各地に広がり、現在では47都道府県、約46,000名の中小企業者が加盟しています。「大阪中小企業家同友会」は1958年に発足し、大阪府下支部には約2,100名が所属しています。